“わが子を母乳で育てたい!”お母さんなら、誰でも願うことではないでしょうか。
こう思ったときから、母乳育児は始まっている、といっても過言ではありません。
出産後は、健康であるならば、本来母乳は出るもの、出せるものです。ところが、さまざまな事情で、出にくいとか、飲みにくいと悩んで立ち止まっている場合もあると思います。
一人でも多くの赤ちゃんが母乳で育つようにお母さんたちに母乳育児をめざしていただきたいという願いを込めて、桶谷式乳房管理法による『母乳育児を楽しくするおっぱいルーム・アドバイス』をまとめました。
母乳は、赤ちゃんにとって最良の栄養源です。心の面から考えても、母と子の絆を深める大切な役割を果たしてくれます。授乳を通して、お母さん自身も母としての喜びが深まっていくことでしょう。赤ちゃんの豊かな人間性と健やかな成長を願うお母さんたちの、毎日の母乳育児の中で、お役に立てることを願っています。
妊娠後期になると、乳房が張ってきて、いまにもお乳がでそうな気配がすることがあります。
ところが、赤ちゃんがお腹の中にいる間は母乳は出てきません。というのは、胎盤から出るホルモンが、母乳分泌を促すホルモンを抑制しているからです。
胎児とともに胎盤を娩出した後には、ホルモンが働いて、乳汁の分泌活動が始まります。
しかし、産後すぐに出るというものではなく、催乳兆候があらわれる時期は、それぞれ個人差があります。
産後2?3日目頃から、張りすぎているのに出ない人や、1週間経っても全く張らずに、やわらかいままの人もいます。
何よりも大切なのは、赤ちゃんに根気よく吸わせることです。
赤ちゃんが、乳首(乳頭・乳頸・乳輪)を一生懸命に吸うことによって、その刺激が、脊髄から脳に伝わり、各種のホルモンの働きによって、母乳は出てくるのです。
乳房のかたちは、じつに様々です。大きなお乳、おわんをふせたような形、扁平のお乳など、ひとりひとり違います。
大きなお乳の人が必ずしもたくさん出るとは限りません。しこりができやすかったり、〝たまり乳?になることが多いので、赤ちゃんにとっては飲みにくい場合もあります。
反対に、もともと小さな乳房で、張ってもこないから、出るわけがないと諦めている人は、桶谷式乳房管理法手技をすることによって、適度な乳量が、一定の間隔で、湧き出るように出てくるようになります。
このような状況は、いわゆる〝さし乳?と言われて〝たまり乳?に比べて良質のお乳です。乳房の外見にこだわることなく、母乳でがんばってみることが大切です。
乳頭の形が、陥没していたり、扁平であったりと、赤ちゃんが吸いにくい状態の人もいます。
その場合でも、乳房の基底部に正しい操作をする桶谷式乳房管理法手技を行うと、どのようなお乳でも飲みやすい状態になるので、心配ありません。
陥没乳頭や扁平乳頭の人が、妊娠中に、無理に乳頭を出そうとクリームをつけてマッサージをするのは、これから成長する乳房全体をいたずらに刺激することになりますからやめましょう。
陥没乳頭で、乳房の基底部に、お乳がしこっている場合にも、出産後の手技によって、お乳が出るように道をつけることができます。
ですから、妊娠中には乳首や乳房をいたずらに刺激するのは避けたいものです。
私たちは哺乳動物ですので、出産後はどの母親も赤ちゃんのために母乳が出る体の仕組みになっています。
ところが、乳房がしこっていたり、赤ちゃんが上手に吸えない状態ですと、本来は出るはずの母乳が出にくい状態になります。生まれて、2?3日目頃から、張りすぎているのに出ないお乳や、1週間経ってもまったく張らないお乳など、いろいろです。その場合、なにより肝心なことは、根気よく吸わせることです。
最初のうちは、時間を気にせずに〝泣いたら飲ませる?ことを繰り返して頑張ってみましょう。
陥没・扁平など、赤ちゃんが飲みにくい乳首の方で、特に従来の人工乳首を使いながら母乳を与えていると、楽に飲めるビン授乳の方を好きになってしまい、ますますお母さんの乳首から直接飲めなくなります。
まずスプーンを使って、授乳や水分補給を試みてみましょう。舌の動かし方の練習には一番効果的です。 その間、陥没や扁平の乳首でも手技を受けることで状態が改善され、よりスムーズに母乳栄養に変えることができるようになります。
母親として、わが子をいとおしく感じ、心から健やかに育って欲しいと願うならば、母乳は必ず出るもの出せるものであることを忘れないでください。
ホルモンの分泌状態には個人差があります。お乳の張り方も一様ではありません。
お乳の張り方は違っても、常に授乳前には少し搾乳して、たまっているお乳を捨てます。授乳前に搾乳することは、乳頭や乳輪を柔らかくするので、赤ちゃんにとって飲みやすい状態を作り出しますし、お乳も出やすい状態になります。
「お乳が張っていないのに、勿体ない」と思われる方もいらっしゃると思いますが、張りには関係なく少量でもよい のです。
反対に出過ぎる方の場合でも、20?30㏄(目安は大さじ1.5?2杯)で良いでしょう。 絞った後は、乳頭をお湯などで、サッと清拭します。それから授乳してください。
赤ちゃんがお乳を飲み終えた後は、それまでの乳房の張りがスーッと消えたように楽になります。そのため、搾乳はしなくてすむと思われるかもしれません。
しかし、実際には、授乳後も乳房の状態を確認する必要があります。まず、乳頭のかたちを見てください。いままで、赤ちゃんがまあるく口に含んで飲んでいたかどうかを確かめます。 搾乳はその時の飲んだ量によっても違いますが、どの場合でも乳頭から乳輪部にかけて軽く絞っておく習慣づけをしましょう。授乳後の軽い搾乳は、たまり乳による乳管の働きの低下を防ぐと共に、乳腺炎の予防に役立ちます。
お乳を与えたいけど、まだ張ってくる感じがしないので、足りないのではないかしらと思うお母さんもいらっしゃるようです。 その上、赤ちゃんが泣いていると、ミルクをあげてしまう人もいるでしょう。
粉ミルクは、お湯でとかすと、いつでも、どんな量でも、簡単につくることができます。 母乳は、そうはいきません。赤ちゃんが吸うことで出てくるしくみになっているので、吸われなければ、徐々に出てこなくなるわけです。
最初のうちは、赤ちゃんがお乳を要求するときに、どんどん飲ませてあげましょう。 赤ちゃんがじょうずに飲むことができるようになってくると、母乳の方もわき上がるように、リズミカルに出てくるうにります。安心して与えてください。 特に、強く張った感じがなくても、吸われるとのほうが〝たまり乳?に比べて、フレッシュでおいしい乳といえます。
片方だけがよく出るからと、飲ませやすい方だけ飲ませていると、そのうち片方しかお乳が出なくなってしまいます。片方に時間をかけ過ぎると、反対側を飲むチャンスを逃してしまうことにもなります。
よく出る場合ですと、赤ちゃんは片方を飲んだだけで満腹になります。お乳が出にくい状態ですと、疲れて眠ってしまうこともあります。いずれの場合であっても、左右を均等に飲ませる習慣をつけましょう。
まず、片方を2?3分飲ませてから、次に反対側を5?7分飲ませます。
その後、また、最初の乳房の方に戻って飲ませてから、また戻ります。赤ちゃんが母乳を飲む時間は、左右を交互に行ったり来たりして、1回15?20分ぐらいで終わらせます。産後間もないときは、赤ちゃんが上手に吸えなかったり、お母さんの乳腺が十分に開いていなかったり、乳首が飲みにくい状態だったりすることが多いので、もう少し時間がかかるでしょう。
母乳が足りていないような感じですと、両方を一度にあげずに、つぎの授乳用にと片方ですませたくなります。
また、1回の授乳時に、片方だけ飲ませておしまいにする方が、お母さんにとっても簡単かもしれません。ところが、乳房のしくみからみると、飲ませないでおくと、お乳は〝たまり乳?になります。多少面倒でも、〝たまり乳?になることは避けたいものです。数分ずつ左右交互に与える習慣をつけましょう。
そうすれば、赤ちゃんも、両方の乳頭に対して、同じように慣れてくることでしょう。赤ちゃんが、じょうずに飲めれば、お乳の出もよくなるということになります。ですから、結局は、効率のよい飲み方といえるのです。
お母さんが健康な状態であれば、1日24時間中、ずっと定刻的に催乳感覚はあります。
しかし、夕方になりますと、1日の疲れが出てきて、体全体の調子が衰え、一般的に母乳の出が悪くなります。
赤ちゃんの方も、「イヴニング・コリック」(夕暮れ泣き)といって、夕方になると病気でもないのに理由もなく泣き続ける時期があります。
このような状態のときに、夕食や夜食にカロリーの高い、胃腸にも負担のかかる食べ物をとって寝ることは、乳質にも悪影響が出てきます。